離檀料の相場

お世話になったことへの感謝の気持ちの示し方

離檀をしようとするときに、離檀料を気にする方も多いでしょう。
離檀そのものの内容や注意点については、他の記事、「離檀について解説」や「スムーズに離檀する方法」などを参考にしていただきたいのですが、特に、「スムーズに離檀する方法」の記事では、主に心情的な部分にスポットを当てて、気をつけるべき点をご紹介しました。
その中で、お寺に対する礼儀として、“これまでお世話になったお寺へ感謝の気持ちをきちんと伝える”ことが大切であるとお伝えしています。
現代のお墓にまつわる様々な社会問題や、それに伴うお寺の懐事情などをふまえると、お寺が檀家を一つ失うことはとても大きいことであると理解する必要があります。たとえ自分自身は代替わりなどが理由で現在のご住職とは面識がないとしても、先祖代々、家族がお寺にお世話になってきた事実は変わりません。ですから、そのことについての感謝の気持ち、お礼の言葉はしっかりと伝えることが大切なのです。
一方で、檀家制度がかつては圧倒的な力関係の下に成り立っており、檀家を辞めることや別のお寺の檀家になること、別の宗派に変えることなどは一切許されなかったという歴史や意識の名残もいまだにあるようで、離檀する際にお布施として、せめてもの感謝の気持ちを示して穏便に事を進める檀家が多いです。
実際に、お墓の中に納められている遺骨を移動するには、様々な情報や手続きが必要で、そのためにはお寺に協力してもらわなくてはなりません。
例えば、お墓の中に納められたすべての遺骨の名前や命日、埋葬日に至るまでの情報が必要です。通常、遺骨にまつわる情報は「過去帳」に記載されていますが、お寺に保管されていることがほとんどです。
さらに、遺骨を移すためには市区町村への申請が必要です。我々生きている人が転居する際には、転入届や転出届を提出するのと同じように、亡くなった人の遺骨がどこに納められているのかを自治体が把握する必要があり、そのための手続きが義務付けられているのです。
こうした「改葬許可申請書」への署名や押印、「埋蔵証明書」の発行など、お寺への協力を求めざるをえない手続きが、実は色々とあるのです。
そのため、離檀のための手続き料や手数料として、逆にお寺から離檀料を請求されるケースもあります。お布施としてなら離檀する側のあくまで“気持ち”が主体ですから、話をうまく進めるためのいわゆる緩衝材になるかもしれませんが、離檀料という“形式”になってしまうことで気持ちが蔑ろにされてしまい、より行き違いが生じることも少なくありません。
また、先にも書いたように、現代のお寺の懐事情はなかなか芳しくないのが現状です。そうした事情から、高額な離檀料を請求されてトラブルになったという話も耳にします。
でも中にはもちろん、離檀料を請求しないお寺もあるのです。では、この違いは何なのでしょうか。

離檀料を支払うこと

そもそも離檀する際に、離檀を申し出た側が離檀料を支払う義務は一切ありません。法的にも全く根拠のないことです。例えば、檀家になる際にお寺との間で契約書を交わしていて、その項目に離檀料についての記載があれば別ですが、長い年月の間、先祖代々が受け継いできた檀家制度の、大本の正式な契約書が存在するケースはほとんどありません。
そして、離檀料の金額に決まりはありませんし、ましてや料金表のようなものも存在しません。ただ、目安となる金額はあるようです。一般的には、3万円から5万円、せいぜい30万円程度までとされています。各家庭の経済状況はもちろん、お世話になった年数や年間で顔を合わせる回数などお寺とのお付き合いの度合いによっても幅はあります。また、遺骨の数なども考慮した方がいいかもしれませんが、法要などの際に収めるお布施一回分の金額を目安にすると間違いはなさそうです。
さて、上記の金額はあくまでお布施として、檀家側の“気持ち”の金額ですが、中には高額の離檀料を請求されることもあるようです。例えば、数百万から1000万円を超えるほどの金額を一方的に請求されるようなトラブルです。
ただこうしたケースは、テレビ番組などでも取り上げられるので、よくある話に思われがちですが、実際には離檀料を請求しないお寺の方が多く、高額の離檀料を請求してくるお寺は稀であることを、ここでは念のためにお伝えしておきます。

離檀料にまつわるトラブルを避けるために

では、レアではあるけれども、もしもその稀なケースに自分が遭遇してしまったら……お寺から想定外に高額な離檀料を請求された場合、どうしたらいいでしょうか。
この場合は、とにかく泣き寝入りすることなく、しっかりと「支払えない」ことを伝え、意思表示をしましょう。もしかしたら、離檀料の支払いをしないことで、離檀だけでなく改葬の手続きが滞ってしまうこともあるかもしれません。そのような時は、行政書士に手続きを依頼することもできます。また最近では、こうした手続きから実際の改葬、墓じまいまでの作業をすべて一括で請け負う専門業者もあります。
ただし当然、第三者へ依頼することで料金が発生しますし、そのことが原因でさらにお寺との関係がこじれてしまい、裁判などに発展してしまえば費用が嵩みますし、もちろん手間や時間も割かれます。
そこでやはり大事なのは、はじめにお寺と話し合いをする、ということです。こうしたトラブルの原因として、事前の相談をせずに一方的に離檀を告げたために関係が悪化し、怒ったお寺から一方的に高額な離檀料を請求されたというケースもあります。ただただ相手のやり方を非難するだけでなく、その原因を探ると自分に非があることは当然あり得ます。
また、同じお寺でも、別の檀家が前の住職との間でトラブルになったという噂を聞いていたけれど、実際は住職が代わったので話し合いがスムーズに進んだというケースもあるようです。
ですからまずは、お寺に相談やお伺いという形で話を持ち掛け、話し合いを進めていくのがトラブルを回避する手段となります。


何度も言うようですが、離檀料は法的に支払う義務はありません。しかし、支払うことが禁止されているわけでもありません。長年お世話になった感謝の“気持ち”をお金で示すことが決して悪いことではありませんので、これまでのすべての家族を代表して離檀料を収め、気持ちよく離檀し心穏やかに改葬することが大事であり、そうすることでそれこそ“気持ち”が済むのであれば、支払うべきだとも思います。もちろん、常識的な金額で、というのが大前提です。
この金額も含めて、離檀料を収めるかどうかについては、相談できる家族や親族がいるならば必ず相談しましょう。きちんと話し合うこと。これは、お寺との間だけではなく、親族側のトラブル回避にもなります。どんなシーンでも大切なんですね。
お墓のことでお寺とトラブルになってしまったら、しかもお金のことであったら尚更、ご先祖様もきっと落ち着かないでしょう。面倒がったり怖気づいたりせず、腹を割って話をして、家族もお寺も皆が納得のいく方法で離檀を進めてくださいね。