最近では少子化が進んだことで、先祖代々のお墓を引き継ぐ人がいなくて、管理できずお墓が荒れ放題になっているというのも少なくありません。
ワイドショーなどでも「墓じまい」を特集することもあり、だんだん墓じまいをする人も増えてきています。
しかし、墓じまいをする前に知っておかないとトラブルの原因になることがいくつかあります。
ここでは墓じまいをする前に知っておきたい手続きの流れや費用について詳しく解説していきます。
そもそも墓じまいとは?
「墓じまい」という言葉、最近になって耳にするようになった言葉ですが、もともとは大阪に会社を構えている霊園・墓石のヤシロの社長である八城勝彦さんが「お墓を無縁化させたくない」という思いから、2009年に「墓じまい」という言葉を名付けたそうです。
墓じまいとは、理由があって先祖代々のお墓を守っていく後継者がいない場合にお墓を撤去して更地に戻して、お墓を閉じることを言います。
墓じまいをした後は、永代供養のために合葬墓に遺骨を移したり、事前に許可を得て特定の場所に遺骨を散骨したりするなどして、お墓を処分します。
お墓を解体・撤去することから「廃墓」と言われることもあります。
墓じまいをする人が増加している理由とは?
戦後のベビーブームで誕生した団塊世代の多くの人たちは、就職などの理由から地元を離れて、都心に生活拠点を移しました。
お正月やお盆に実家に帰って、お墓参りやお世話をしますが、自分の子供にも毎回、帰省さえるべきか?しかも自分が年を取って歩くなったら?という理由などから、自分の子供にかかる負担を不安に思う方も少なくありません。
また、子供がいない夫婦や独身の方は後継ぎ問題になってきます。
このような時代の流れで、近年「墓じまい」が注目されるようになってきました。
墓じまいをする方の中には、自分や子供がお墓参りをしやすい土地に、お墓を新たに建て直す方もいらっしゃいます。
また、子供たちのことを考えて、迷惑をかけないようにお墓を残さない形として、散骨や合祀、樹木葬、散骨堂、永代供養などの選択肢もあります。
墓じまいをしないとどうなる?
お墓は受け継いでお参りをする人がいなくなってしまうと、「無縁墓」となります。
管理する人がいなく、お世話やお参りをしないと、お墓は草木が多い茂り、荒れ果てた状態になるのは目に見えてわかりますよね。
無縁墓と判断される基準は、霊園や墓地で異なります。
ただし、平成11年に「墓地、埋葬等に関する法律」で、手続きをすれば無縁墓を改葬出来るようになりました。
二 無縁墳墓の改葬手続の見直し
無縁墳墓の改葬手続について、申請者の負担を軽減する等の観点から、死亡者の縁故者及び無縁墳墓等に関する権利を有する者に対し一年以内に申し出るべき旨の官報公告及び墳墓のある場所における立札設置を行い、その期間内に縁故者等の申し出がなかったことを証する書類を改葬許可申請書の添付書類とすることその他所要の見直しを行ったこと。
〈引用元:厚生労働省HPより
・墓地、埋葬等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行について(◆平成11年03月29日生衛発第504号)
お墓が手続きをとられたら、最終的に撤去され、中の遺骨は合祀墓で供養されてしまいます。
墓じまいの流れを詳しく解説!
墓じまいをするとひと口に言っても、今日明日で出来るものではなく、1人で出来るものでもありません。
実際に墓じまいをするには、資料などを申請して許可をもらう必要などもあり、それらを知らないといざ行う時に苦労するかも知れません。
そのため、ここで詳しく解説していきますので、参考にしてください。
親族としっかり話し合いをする
いざ墓じまいをしようと思って、自分や家族だけの意思で行ってしまうと、あとあと親族などとトラブルになる可能性があります。
そのため、しっかりと親族とも相談をした上で、了解を得てから行うようにしましょう。
また、墓じまいをした後の遺骨の行先についてもしっかり話し合いを行いましょう。
遺骨の行先については、お墓参りがしやすくお世話のしやすい場所に新たにお墓を建て直したり、合祀、納骨堂、手元供養、散骨などの方法が挙げられます。
改葬先を決めて、受入証明書か墓地使用許可書を発行してもらう
改葬先を決める時には、現在誰々がお墓に納められているか、全部で何体あるのか確認をする必要があります。
遺骨を新たにお寺や公営墓地、納骨堂に納骨するには、ネットの情報だけ見て判断するのではなく実際に見学に行って、目で確かめることも大切です。
そこで管理者と話が出来れば、安心して預けることが出来るのかの判断になります。
改葬先が決定したら、お寺や公営墓地の場合だと墓地使用許可書、納骨堂の場合だと受入証明書を発行してもらい、受け取ります。
改葬許可申請書が必要な場合は発行してもらう
菩薩寺に墓じまいすることを伝えてから、お墓が現在ある自治体で、改葬許可申請書を発行して、受け取ります。
この改葬許可申請書は、墓じまいをした後に、お寺や墓地、納骨堂などの他の人によって管理が必要な場所にお骨を預ける時に必要になります。
散骨や手元供養の場合は必要ありません。
埋蔵証明書もしくは収蔵証明書を発行してもらう
お墓の現在の管理者から埋蔵証明書を発行してもらいます。
この埋蔵証明書は、お墓1基に対して1枚ではなくて、故人1人当たり1枚が必要になります。
発行手数料は、1枚300~1,500円かかります。
納骨先が現在、納骨堂の場合は、埋蔵証明書ではなく、収蔵証明書を発行してもらいます。
改葬許可書を発行してもらう
現在、お墓がある自治体で改葬許可書を発行してもらいます。
改葬許可書は故人1人について1枚必要になります。
発行手数料は0~1,000円かかります。
改葬許可書を発行してもらうには、改葬許可申請書と埋蔵証明書、受入証明書または墓地使用許可書の3つの書類の提出が必要です。
お墓の撤去作業をしてもらう石材店を決める
お寺によってはこの石材店を利用しなければいけないと指定されているところもあります。
もしそのような指定がないのなら、2~3件ほどの見積もりを出して比較して決定するようにしましょう。
墓石処分と区画整備(一平米に対して)で、10~15万円が目安となっています。
閉眼供養・遺骨の取り出しをする
ここまできたらいよいよ遺骨の取り出しをします。
取り出す前には僧侶にお経を読んでもらい、閉眼供養をしてもらいます。
閉眼供養とは、お墓に宿っている仏様や先祖の魂を抜き取る供養のことを言います。
供養が終われば、石材店の方が遺骨を取り出してくれます。
遺骨を持ち帰る時には、骨壺が割れないようにするために、事前に風呂敷やさらしなどを持っていくとよいでしょう。
改葬先に納骨する
散骨や手元供養以外の場合は、改葬先に納骨をします。
この時に、改葬許可書と受入証明書または墓地使用許可書が必要になります。
ここまで墓じまいの流れを詳しく解説してきましたが、墓じまいはやると決めても今日や明日と短い期間で出来るわけではありません。
いろいろな手続きや調整などが必要になります。
墓じまいを行う前の準備から完了まで、どのような形をとるかで変わってきますが、1カ月前後かかると考えておくといいでしょう。
墓じまいの費用はいくらかかる?
墓じまいの流れを詳しく解説してきましたが、次は墓じまいにかかる費用について解説していきます。
一般的にお墓は、お寺や霊園から土地を借りて建てられています。
先祖代々の昔からあるお墓だったとしても、永久に持っている権利はお墓に対してやその場所で供養していくための権利であって、土地を所有する権利はありません。
そのため、墓じまいする場合は、借りていた土地を更地にして、土地の管理者に返却する必要があります。
返却するにはさまざまな名目で費用が掛かってきます。
では、墓じまいをする時には、どのような費用がかかるのでしょうか?
墓の解体と撤去する費用
墓じまいをするのに、必ず必要になってくるのが、お墓の解体と撤去する費用です。
だいたい、石材店に頼んで解体作業を行ってもらうことになります。
お墓の解体と撤去するのにかかる費用の相場は、10万~30万円ぐらいになります。
この費用は、お墓の大きさやお墓の建っている環境で変わってきます。
基本は重機や運搬機を使うのですが、路地が狭いなどの理由で重機などが使えないと高額な費用になることもあります。
あらかじめ石材店で見積もりを出してもらうと安心ですね。
閉眼供養と開眼供養のお布施代
ほとんどお墓を解体する時には、閉眼供養(魂抜き)を行います。
僧侶の方を呼んで読経をしてもらう必要があります。
僧侶の方には感謝の気持ちとしてお布施を用意することになり、相場は1万~5万円ぐらいになります。
また墓じまいをした後に、新たにお墓を建てる場合は、閉眼供養(魂入れ)を行う必要があります。
開眼供養のお布施代の相場も、閉眼供養と同じく1万~5万円ぐらいになります。
改葬の手続きに必要な書類の費用
墓じまいをする時に、改葬するなら改葬許可申請を行う必要があります。
改葬許可書を発行してもらうには、改葬許可申請書と埋蔵証明書、受入証明書または墓地使用許可書の3つの書類の提出が必要です。
これらの書類を発行してもらうには、数百円~1,500円ぐらいの発行手数料が必要になります。
新たにお墓を建てる費用
墓じまいをしたら、遺骨を新たに供養するための納骨先が必要になります。
墓じまいをした後の納骨先としては、新たにお墓を建てる場合があります。
その場合は、お墓建てる平均費用は145万~205万円ぐらいかかります。
墓じまいはしっかりと話し合いをして時間をかけて行いましょう!
今回は墓じまいをする前に知っておきたいことや墓じまいの流れ、墓じまいにかかる費用を詳しく解説してきました。
これらのことは、知っていないと後からトラブルなどになる原因になります。
しっかり準備や相談などをしながら進めることが大切です。
墓じまいをするか検討するには、人それぞれの事情があるとは思います。
しかし、今あるお墓の将来が心配なら、墓じまいや改葬を積極的に考えるようになりましょう。
無縁墓にするよりは、かなりいい方法になります。
大切なのは、先祖を敬う供養をすることなどで、それを忘れなければご先祖様もきっと喜んでくれると思いますよ。