お盆は先祖の霊を祀る行事として、全国各地で行われていますが、その風習は地域によって異なります。
今回は山梨県と広島県に伝わる、ちょっと変わったお盆の風習を紹介します。
山梨県のお供えもの
里のものとして『あべ川餅』をお供えする風習があります。
安倍川餅は元々静岡発祥のお菓子で、焼いた餅を柔らかくして砂糖入りのきなこをまぶしたものです。しかし山梨では、四角いお餅にきなこと黒蜜をかけたものを『あべ川餅』と言うそうです。
なぜお盆にあべ川餅をお供えするかというと、山梨では昔から季節の行事にはお餅を食べる習慣があり、静岡から入ってきたあべ川餅が形を変えて定番になりました。
静岡では砂糖、山梨では黒蜜という違いができた理由としては、山梨では一般的に手に入りやすい黒蜜を選んだのではないかといわれています。
山梨県のお土産と言えば「信玄餅」が有名ですが、元はこの『あべ川餅』をヒントにして誕生したものだそうです。
ちなみに…
あべ川餅は、元は徳川家康が食べていたきな粉餅が原点で、一説によると安倍川上流で採れた砂金に見立て、それを気に入り『あべ川餅』と名づけたそうです。
広島県の盆燈籠
特に広島県西部の安芸地方では、お盆の時期に赤・青・黄色などカラフルな燈籠型の飾りをお墓の周りに立てる風習が残っています。
もとは広島市内の浄土真宗のお寺で行われていた習慣でしたが、今では広島市内に限らず、宗派を超えて行われています。
盆燈籠は竹の先を6つに割り、それぞれの面に色紙を貼っています。雨が降った時に水がたまらないよう、その中の1面は下の部分が切り離されており、ヒラヒラと揺れるようになっています。
お盆の時期、広島のお墓はとてもカラフルになりますが、カラフルな盆燈籠に混ざって、白い盆燈籠も飾られていることがあります。これは初盆(新盆)に飾ります。
カラフルな色には『世の無常』などの意味が込められていて、ご先祖様への感謝の気持ちを表しています。立てた盆燈籠はそのままにしておき、お盆が終わるとお寺で焼却処分をします。
この盆燈籠の歴史については明らかにされてはいませんが、広島に住んでいた紙屋町の夫婦が、亡くなった娘さんのために灯籠を立ててあげたかったが、お金がなかったため紙で作った灯籠をお供えしたのが始まりと言われています。
おわりに
今回は山梨県・広島県で伝統的に行われる、ちょっと変わったお盆の風習をご紹介しました。
自分が生まれた地域や住んでいる地域のお盆の過ごし方を調べてみると、他と違う風習があることを発見できるかもしれません。
小さい頃から住んでいる地域だと由来や意味を知らないことも多いと思いますが、きちんと知ればその地域をもっと好きになるきっかけとなるかもしれません。
来年の夏は由来や意味を理解した上で、いつもと違ったお盆を過ごしてみてはいかがでしょうか。