お彼岸という言葉は聞いたことがあっても、意外といつのことなのかよくわからない方もいるのではないでしょうか。
お盆の場合は、仕事が休みになるなど身近に感じられますが、お彼岸のお参りはいつからいつまでで、どのような意味があるのでしょう。
今回はお彼岸の時期や期間、また意味などについて詳しく見てみましょう。
■お彼岸の時期と期間
〇お彼岸の時期と呼び方
お彼岸は、日本人の生活文化から生まれた暦日である、雑節の1つです。雑節は、中国から伝わった暦日で1年間を24等分にした二十四節気や、五節供とは異なるものです。
年に2回、二十四節気である春分の日と秋分の日を中心とした、前後3日間の7日間のことを言います。春分の日を中心とした7日間のことを「春彼岸」と言い、秋分の日を中心とした7日間のことを「秋彼岸」と言います。
お彼岸の初日のことは「彼岸の入り」と呼び、春分の日・秋分の日を「彼岸中日」、お彼岸の最終日のことを「彼岸の明け」と呼びます。
国民の祝日を定める法律によると、春分の日は「自然を讃え、生物をいつくしむ日」、秋分の日は、「祖先を敬い、亡くなった人を忍ぶ日」と定められています。
〇「暑さ寒さも彼岸まで」と言われる理由は?
春分の日と秋分の日では、昼と夜の長さがほぼ同じになり、どちらも季節の折り返し地点です。
春分の日は、春の折り返し地点で、春分の日を過ぎると夜が短く、昼が長くなっていき、だんだん寒さが和らいで暖かくなっていきます。
秋分の日は、同様に秋の折り返し地点で、秋分の日を過ぎると、昼が短く、日没がはやくなるため、残暑もなくなりだんだんと涼しくなっていきます。
■なぜ春分の日と秋分の日が中日なのか?
春分の日と秋分の日がお彼岸に深くかかわる理由は、大きく3つあげられます。
〇西方浄土
春分の日と秋分の日は、昼と夜の長さがほぼ同じになり、太陽が真東からのぼって真西に沈みます。
仏教の教えの中では、西方浄土という考えがあり、西に仏様がいるあの世(彼岸)が存在すると考えられていました。
太陽が真西に沈む春分の日と秋分の日は、あの世とこの世が最も近づいているとされるため、この時期に先祖を供養し、故人をしのんで祈るという風習ができました。
〇中道
仏教の悟りの神髄である中道とは、「両極端を離れた」という偏らない立場であることを表します。
昼と夜の長さが同じ春分の日と秋分の日は、中道の象徴とされていることから、お彼岸にかかわりが深いとされています。
〇豊作と収穫を祈る季節の節目
春分の日と秋分の日は、暦の上では春と秋の折り返し地点、季節の節目となっています。
仏教が布教する前から、日本では古来より農耕儀式や自然崇拝の考えで、種をまく時期である春に豊作を祈り、収穫の時期である秋には五穀豊穣を祝って、祖先や自然に感謝するという習慣がありました。
これらの理由から、日本の風習としてお彼岸が定着していきました。
■お彼岸の歴史
お彼岸が暦に載せられるようになったのは、比叡山でのみ行われていた彼岸会の説法が人気があり、日付を知りたいという人が多かったことから、暦に日付が載せられるようになりました。
現在のお彼岸は、春分の日と秋分の日を中日とした前後3日間の、合計7日間です。日本では古くからこの時期にお参りをしていましたが、完全に時期が定まったのはいつからなのでしょうか。
日本後記によると、806年に諸国分寺にて金剛経を読ませたというのが「彼岸会」の始まりです。しかしこのころは、お彼岸の時期については明記されていません。
その後約900~1750年頃になると、お彼岸の入りが春分の日と秋分の日から数えて3日目となりました。没日(もち)という陰陽道での凶日が重なった場合は、お彼岸の入りの日を1日ずらしていましたが、暦がかわり、没日の制度が廃止されてからはそれもなくなりました。
975年に書かれた蜻蛉日記や、1010年に書かれた源氏物語にも「彼岸の入り」「彼岸のはて」という言葉が使われていることから、お彼岸の存在が定着していることがわかります。
1800年代に入り、暦が天保暦になってからは、現在と同じ春分の日と秋分の日を中日とした前後3日間の合計7日間がお彼岸となっています。
■お彼岸の由来と意味
「彼岸」とは、仏教用語で煩悩や悩みから解放された悟りの世界、すなわちあの世のことを言います。そして今私たちがいる煩悩や迷いに満ちた現在の世界を「此岸」と言います。
お彼岸は、西にある極楽浄土が此岸に最も近づく時期であるため、ご先祖様を供養し、六波羅蜜という6つの悟りの修行をして、より彼岸へと近づくための期間とされています。
六波羅蜜とは、「布施」「持戒」「忍辱」「精進」「禅定」「智慧」のことで、人に施す・心を戒める・不平不満を言わず耐える・全力を作る・心を鎮める・真実を見る智慧を身につけるという意味です。
お彼岸には、ご先祖さまや故人をしのんでお参りすることとともに、六波羅蜜の内容をふまえて、自分の日々の暮らしを振り返ってみてはいかがでしょうか。