墓じまいのトラブル
現在のお墓から遺骨を取り出し、墓石を撤去した上で更地に戻す「墓じまい」。実際に着手する中で、トラブルが発生している事例も散見されるという。トラブルを未然に防ぐ上で、気をつけるべきポイントについて、「わたしたちの墓じまい」を運営する株式会社フーフー代表の高木敏郎氏に聞いてみた。
12・19シニアライフよろず相談室
「墓じまい」をめぐって発生しがちな主なトラブルは、「お寺とのトラブル」と「親族とのトラブル」です。
まず、「お寺とのトラブル」。「離檀料に係るトラブル」と「墓石撤去費用に係るトラブル」が、そのほとんどを占めます。
前々回も触れましたが、「墓じまいの相談をしたところ、住職から数百万円の離壇料を請求され、びっくりした」というようなご相談をいただくことがあります。離檀料の請求に法的な効力はありませんが、先祖代々お世話になった感謝の気持ちを込めて1回分の法要程度(3~15万円)をお布施として納めるのがマナーであると思います。その上で、墓じまいに踏み切らざるを得ない理由を誠実に説明すれば、トラブルを回避できる可能性は高いと思います。
また、墓石撤去にあたり、お寺が指定する業者以外を選択できず、相場より高額な撤去費用を見積り・請求されることがあります。墓石の撤去費用は20~40万円(3㎡以内のお墓の場合)が相場ですので、押さえておきましょう。これと大きくかけ離れた水準の請求は、消費者契約法、独占禁止法違反の疑いもあります。
離檀料や墓石撤去費用をめぐって、お寺側と折り合いがつかない場合は、弁護士などの法律家や墓じまいの専門業者に相談する事をおすすめします。
次に、「親族とのトラブル」。「墓じまいの相談をしたら、親戚から『合祀(大勢の遺骨と一緒に埋葬)なんてあり得ない。ご先祖に失礼』と大反対された」、「墓じまいを終えた報告をしたところ、『勝手に墓じまいをするな。遺骨をもとのお寺に戻してくれ』と怒鳴られた。日頃お墓参りをしている形跡もないのに・・・」というようなご相談がよくあります。
こうした親族との意見の不整合の背景には、宗教観の違いや、世代間ギャップによる価値観の相違などが存在し、なかなか一筋縄にはいきません。
親族間のお悩みについても、是非、墓じまいの専門業者にご相談ください。「今、墓じまいをしないことによる近い将来のリスク」、「墓じまいをした後の遺骨の移転先の選択肢とそれぞれのメリット、デメリット」、「親族間で同じような意見の相違が生じた際に、どのように決着させたかという過去の事例」など、親族を説得する上で効果的と思われるさまざまな情報をご提供できると思います。
墓じまいは、「私の代で近い将来のリスクを絶ち切る」という強い意思の力を必要とします。できるだけ、元気なうちに取り組むことが重要です。また、多くの人にとってはじめての経験であり、不安はつきものです。お悩みはひとりで抱え込まず、墓じまい専門業者をうまく活用してください。ほとんどのお悩みは解決できるものだと思います。
(えとき)
百貨店でセミナーの講師を務める株式会社フーフー代表の高木敏郎氏